蛇谷 りえ / JATANI RIE

怒濤の地元の祭りといっしょに鳥取の夏が始まった。前日に海の準備をして、朝から海へ出る。地上では暑い暑いと言ってたけど、海の中はまだまだ冷たい。人間が調節できない温度。すこしずつ海の温度に身体を慣れさせる。波がとろりとろりと迫ってくる。どこまでいっても地面が見えるので安心な遠浅の海。冷たい海の奥に向かって、浮き輪になった気持ちで身体を浮かせて空を見る。耳をつけると、周りの音が聞こえなくなって、自分の微かな呼吸の音と、目には空しか映らない。静か。たまに波のリズムがかわって、身体がゆれる。空の青さは透き通った青で、絵の具じゃ出ない。宇宙の遠くの方からいろんな青が重なってできてるのがわかる。雲はまっ白で絵の具の白を発明した人は雲の白を真似したんじゃないかな。濃い白と、ふわっと軽そうな白が混ざる。雲は煙みたいに速く流れていくものがあれば、全然動かないものもある。私の目のフレーム内を鳥がシュッと通りすぎていって、また空と雲だけになる。塩水でヒリヒリして炎症してる傷口に気づく。ソレ以外は海と同化してるものとして、しばらく過ごす。静かで真っ白な世界。海に浮かぶ葉っぱはこんな世界を見てるのかな。

揺られすぎて、平行感覚がなくなったのか、酔ったのか、ふらふらしながら砂浜へ帰る。浜にあがると、太陽の日差しがあたたかく身体を包んでくれる。温かいはやさしい。温かいは大事。1時間ほどで帰ってきて、温かい部屋でぐっすり眠る。

2015年07月21日 BLOG