蛇谷 りえ / JATANI RIE

いろんな「見る」がある。

周りの音をきく。自分の音を出す。自分の音を引く。自分の呼吸をキープする。次のおもしろい音を探す。自分の音がどう反応したかじっくりきく。自分の音と誰かの音の重なりをきく。自分の音がどれぐらいの大きさに響いてるか空間を意識する。相手の目をみる。手の動きを見る。楽譜をみる。客席を見る。自分を客席側からみる。何も見ない。近くできく。遠くできく。立ってきく。座ってきく。体をゆらす。足を動かす。天井をみる。なにかを思い出す。目を閉じる。耳だけできく。体で響きを感じる。音楽にはいろんな「見る」がある。自分一人ががんばって、何かを提供し続けるよりも、私と、目の前の誰かや何かが作用して、何かが生まれて、それを、いろんなところからものごとを自由に見ることができるのはやっぱり好きだし、例えそれが枯れたり、こわれたり、風化しても、どのようにまた作用して流れていくのか、音が出なくなって、消えて、振動がなくなるぐらいまで、狂うぐらいに見ていたい。自分を取り巻く環境がどんなところなのか、身体ぜんぶで味わえることが気持ちいい。世界にはいろんな「見る」があって、見ることで世界とつながることができるし、「見ない」っていうイマジネーションもまたいい。

 

2015年11月24日 BLOG