蛇谷 りえ / JATANI RIE

向こう側

余裕がないときは、対象の向こう側のとおくの方を見ながら話すようにするといい。目を合わせたり、なんとかしようと思うと、肩がぎゅっとして、目もぎゅっとして、言葉もスパっとして、ぜんぜんいい会話にならない。車の運転みたいに、遠くの方を感じて、ゆったりとした気持ちで。海とか空とか、対象がない、なんにもない遠くの方をみるのは気持ちが良い。あと、冗談。冗談が飛び交う時間は優雅でいい。

犬のおとうさんと朝の散歩は気持ちがいい。犬のおとうさんは毎朝、どんな道をとおっても、今初めて出会ったように興奮して、地面の匂いをふんふんふんふんと嗅いでぐいぐい歩く。たまにぜんぜんちがう道をとおってみると、興奮度合いがぜんぜんちがって、白鷺の匂いやカモの匂いをぐいぐい鼻を地面にくっつけて嗅いでいる。その夢中な姿をみて、その新鮮さ、いいなーって笑う。

2015年10月16日 BLOG