蛇谷 りえ / JATANI RIE

休暇

久しぶりのたのしい時間の次の日、なるだけ仕事のことは考えないようにしようと決める。予定してた約束もキャンセルして、誰にも誘わないように静かに行動する。東京はなにかをしないといけないような空気が流れて、なにもしたくないときの居ずらさは半端ない。友達の家で、遅めに起きて、なるだけ普段通りのゆるゆるさを慎重に保ちながら過ごす。

どこに行こうか、以前から気になってた第五福竜丸展示館へいく。ほんとは、美術館とかも行くの嫌な心境だったけど、なんだか直感でここなら行ける気がして。夢の島という、ゴミの埋め立て地のエリアに、展示館や植物園、スポーツ場など、いろいろある。時間もないので、真っ先に展示館へ、入場無料。ドアに入って、すぐに福竜丸が強烈に飛び込んでくる。天井が低くて福竜丸ギリギリなのと、照明が暗いのと、いろんな理由がそうさせるらしい。

展示館は福竜丸を囲うように、パネル展示されており、順路にいくと当時の事件の様子、背景、その周辺の出来事、その後のことが、書かれている。読み終わっても、ちょうどいいボリュームの、いい展示。思う事はいろいろあった。

なにより、福竜丸がここにあるのが、とてもリアリティがあるなあ、と思った。これで、パネルだけだったらきっと捉え方は全然違う。実物が、ここにある、匂いや湿気がある。モノに宿ってる感じがした。見終わったあと、関連資料のコーナーに第五福竜丸に関する絵本や、雑誌、書籍が販売されており、私はどれも見た事がなかったし、この事件のことも知らなかった。知ったのは、一昨年、水都大阪でヤノベケンジの作品のモチーフだったり、岡本太郎の明日の神話に書かれていたことからだった。それから友達の口コミで、私はこうしてここに来て、知ることができて良かったと思った。

そこにあった、なんだか気になった本を買おうとしたら、作者がいますのでお呼びしますね、と声をかけてくれて、よくよく聞くとここの学芸員さんだった。学芸員さんは、企画展やイベントをここで開いていて、訪れる方の様子や、ここのことをたのしそうに話してくれた。過去にあった出来事を、厳重に保管するわけでもなく、メモリアルとして、時代を止めてしまうわけでもなく、いろんな意見を聞こうとする感じや、今の時代でも通用する言葉で話す姿勢が、とてもステキだった。過去の出来事ではなくまだ、今の出来事になってる。なんていうか、風通しがよかった。

こういう場がつくれるんなら、学芸員も悪くないな。って思った。帰り、友達の家の近くの焼き肉屋にはいって、原発の話をした。

行った事ない人は是非いってみてね。

第五福竜丸展示館

http://d5f.org/

 

 

2011年09月03日 BLOG