蛇谷 りえ / JATANI RIE

わからないの勇気

鳥取に住んで2年目。また寒い季節がやってきました。古い建物の中にいても底冷えして、ダウンジャケットが手放せない。去年とちがったことといえば、車にのれるようになったことぐらい。ぐらい、なんだけど、これが結構たのしい。ぼんやりしてると速度が時速40kmぐらいになったりする。まわりのこともみないといけなかったりするので、適当に一人になれる。一人になって落ち込んでる場合じゃなかったりする。

そんで鳥取の運転のなにがいいかって、小さいことに悩んでいても、ときどき海がざばーんと波打ってたり、空が遠くの方にあったり、夜なのにやけに明るく照らしてくれたりする。水鳥もたくさんいて、雨もザザーっと落ちてくるので、ああ何をちっちゃいことに悩んでるんだろうと、あっぱれな気持ちになれる。

鳥取県倉吉市にある灘手という町にアーティストの有佐くんが2ヶ月間の滞在制作をした。私はそのディレクターという役割を仕事でやるんだけど、とてもおもしろい仕事だった。有佐くんはなんでも言葉にしてくれるし、わからないことも言葉にしてくれる。「例えば、」とわからないことがあれば、たとえ話にしてくれる。このやりとりは、昔米子くんとたくさん話をした夜のことを思い出す。つい、答えが出る方がえらくみえたり、ひとつの答えがあるようでくちごもったりしてきたけど、今回の仕事で、話をすることの楽しさというか、対話するおもしろさを改めて気づく事ができた。それは、みんなが「わかってるフリ」とか「わかってる」んじゃなくて、「わからない」という言葉から始める対話で、サッカーみたいに転がしていく感じ。でも、まだ慣れない人は、単純なパスまわしになるけれど、いい感じになってきたら、これがきっとクールなパスまわしになったりするんだろうなあ。とイメージしてみたりした。

しかし、ほんとに書き言葉が苦手な私は、今や本を読む時間も、パソコンに向かうこともぐんと減った。そしたら情報源がぱたりと止まっておもしろくなくなってきた。目の前から学んでいくのも大事だけど、情報から学んでいくこともしっかりやりたい。ということで、音楽も映画も、本も、鳥取にいながらも積極的に取り入れていこうと思う。なんていうか、人が作ったものから、考えられることがこんなにもあるんだな、と有佐くんの展示を経験して実感した。言葉にしたり、考えるのがとても楽しい。書き言葉、上手になりたい。上手にならなくても、思ってるとおりに書けるようになりたくて。なりたくて。

わからないことって、最近そう多くなくて、おもしろくないなーと思ってた。でも、わかってもらいたいって気持ちが大きくて、かってにチューニングしてただけで、もっとわからないことをしていったら、きっともっと楽しい会話ができて、みなことない景色ができるんやと思う。なんていうか、そういう対話する場を私はやっぱり信じたいし、この間それを目撃できたから、きっとあれは夢じゃないんやろう。

 

2012年11月29日 BLOG