蛇谷 りえ / JATANI RIE

何度も何度も波はやってくる

日本海の波は大きい。遠浅の海のくせに、ぼんやり立ってると大きな波がせまってわたしの体をゆすられる。波をこえようとジャンプすると、あっというまに深いところにたどり着いてしまって、溺れそうになるし、その繰り返し。

サーフィンを初めて2回目の海。朝8時に集合して20分ほどで海にたどり着く。40秒で準備しな!とサーフショップのおにいさん/Aさんがにやけた顔をする。今日の波は腰ぐらいかな、と判断すると、風が強い海岸にロングボードを頭にのせて運ぶ。この運ぶときが、頭のどのてっぺんに乗せたら安定するのわからず、風にふきとばされそうになるけど、ボードが傷つくとシャレにならないので、必死になる。砂浜はゴミがちらほら落ちていて、ちくちくするけど、暑くはない。準備運動を軽くして、グリップつけて、波の弱い方から海にはいり、一気におきまで漕ぐ。おきまでいったら、波を待つ。どの波にのるか、選ぶけど、選びすぎるとよくなさそうなので、どんどん乗ろうと試みるが、短い波だったりして苦戦する。上手な人がとなりにいたので雰囲気をみてると、乗るタイミングが少しわかって、チャレンジする。パドリング(腕でこぐ)して、ボードをおこして、さっと立つ。あとはバランスをとる。波が大きいので、すぐに立てた。いえーい。また、おきへ出る。おきへ出るには、大きな波をこえていかないとダメで、波をのりこえ間違えたら、すぐにボードごとふきとばされる。何度も何度も波はやってくるので、「ああ、ごめんなさい、勘弁して」とふっとばされながら思わず祈るけど、波は容赦なく大きくふりかかってくる。いいかげんにやってると、ボードでケガしてしまうので、ふざけてられへんから、しゃきっとして、波にずんずん向かっていく。ふきとばされへんように、しっかり足をふみこむ。

そのあとも何度かおきへ出て波を待つが、波をまってる間に、腕がつかれてもげそうになる。前回はもうちょっと体力あったのに。夏バテでご飯食べてないから、体力が落ちたみたい。あー、ご飯食べとけばよかった。悔しい思いをしながらも、またおきにでる。腕が疲れましたーー!とAさんに言うたら、「声が出てるからまだいける」と部活の先生みたいにしごかれる。S。だけどやっぱりいい波がきても、ふんばれず、となりですいすい波をのっていく姿をみて、いいなーとながめる。そのまま力つきて、ボードの上で横たわったまま、浜に漂着する。

いっしょに来た子が、初めてのサーフィンでAさんに教えてもらっているのをながめる。頭で考えしすぎてあんまり実感がなさそう。波を感じるには、一人で波と向き合うのが一番なんやと思う。でも、いっぱい失敗しないと、波の感覚はつかめないから、いっぱい失敗しー!と、思わず応援する。もう1人は、私と同じく二回目の海で、調子がよさそうやけど、なんだか肩に力がはいってる感じ。Aさんが、タイミングがわるい、あとはパドルの長さが短い。とアドバイスする。「波より前にこがないとダメ。自分でこがないと絶対だめ。力まかせに乗ってもだめやし、波まかせにしてもむり」「波をのるのは、波の前で立たないとダメ。タイミングが遅れるのが一番だめ。乗れない原因がたくさん出てきて複雑になるから」。力尽きた私には、「サーファーはなるべく最低限の力で、最大限に波にのりたいから、なるべく体力を使わない動きをします。パドルの動かし方をかえてみたり、波の勢いが弱いところからおきに出たり、潮の流れを利用したり。基本がんばらない。筋力トレーニングを陸でやっても数倍時間がかかるだけ。」「疲れたら終わり、沈んだら負け。」私は、きれいにスマートに乗るよりも、どんどん大きい波にチャレンジしたいなー。そんで、失敗したら波にボムって吹っ飛ばされるやつされたいな。それでも、ぜーぜーいいながらもボードにしがみついてたい。どんなけ考えてても、体力なかったら意味ない。うん。

ああ、言葉が響くぜ。サーフィン。とじんじん感じながら、お気にいりのサングラスかけて海をみながら寝転ぶ。サーフィンやってたら、女の子はウエストが引き締まるらしい。通りかかるサーファーのおねえさんのスタイル素敵やもんなあ。あんなんなれるかな。ボードが足りないので、みんなで使い回す。休憩。暑いから、サングラスをかけたまま海に浸かる。そしたらやっぱり波がやってきて、小さい波はひょいっと飛び越える。余裕。それでもやっぱり大きい波がやってきて、飛び越えるタイミングを逃して頭からかぶる。サングラスが一瞬どっかいく。一人でケラケラわらう。となりでその波にのろうとしてるサーファーがいて、はしゃぐ。大きい波がやってくるほど、心がわくわくする。ボードがなかったら一発で溺れるけど、サーフィンがあったら乗れるんやから、おもしろすぎるやん。サーフィンは、海と戯れる道具なんやわ。

2013年07月20日 BLOG