蛇谷 りえ / JATANI RIE

誰とも分かち合えないこと

どれだけ仕事に集中しても、

一緒に暮らしていた猫との時間は、忘れたくないから、何度も目に焼き付けようと思い出しては消え、

消えては思い出すように、猫の痕跡を探している。

人間だったら、あの時あんなこと言っていたな、とか思い出せるけど、

猫はにゃーにゃー言ってただけだし、ごろごろくっついてきただけだから、

あの手触り、温もり、匂い、声を思い出すしかできない。

思い出そうと集中すればするほど、もしかしたら、死んでないかもしれないと妄想だってできる。

どこかに出かけているだけで、今、ここにいないだけ。

それがとても長い間、いつ会えるのか約束もなく、突然に出発をしただけなのかもしれない。

ほんとに油断していた。いつ死んでもいいように、生きてきたのに、まさか向こうが先にいなくなるなんて思ってなかった。

向こうが先に、って思える関係が、築けていたことも、気づいてなかったし。

もっと、パスワードの安全度みたいに、ここまですれば安全度高いです。って

わかるように表示してくれたら、気づけるのに。

2025年09月04日 BLOG

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