蛇谷 りえ / JATANI RIE

バイトの話1

ビルの管理会社のバイトを2月から4月までした。一日ビルの警備員みたいにするやつかなーと呑気に思ってたら、清掃会社だって、掃除は嫌いじゃないので、面接のときに猛烈にアピールした。3ヶ月しか働かけないことも、フリーランスで副業してるから、定期的に入れないことも、空き家の改修工事とかで、体力には自信ありますとか。結果、「絶対に途中でやめないこと」を条件に雇ってもらえた。そのバイトの面接を担当した人の目はどこかでみたことあるなあ、と考えてた。バイトが始まって、谷町にある高層マンション(14階建て程度)の共用廊下をひたすら洗浄して、乾拭きをする。作業はモップで洗剤を巻いて、デッキブラシで隅っこをこする、マシンで全体を洗浄して、水を巻く、マシンで水気をとって、モップで乾拭きする、これらの工程を4人ぐらいで一日(8時間)で行う。この間、無言。すべては段取りと、リズムというか間で、体で覚えていく。もちろん、作業のコツとかは説明を受けるけど、それ以上は説明がいらない。ただ、キレイかつ丁寧に掃除をする。仕上がりをみて、ムラがあればやりなおす。「こんなもんかな」じゃない。普通の人にとっては、ただのマンションの廊下の清掃なんだけど、この徹底さは、そこらへんの適当な仕事よりもかっこよくて、初日にして興奮してしまった次第。高層マンションに住む人の様子を横目でかいまみながら、生活をイメージする。大きくて立派な車、きれいで新しい服、同じ年ぐらいのこどもたち、魚の煮物の匂い、生協の箱。中には、500円玉を片手に近づいてきて、「私の家の前のエリア(私有地エリア)もお願いでけへん?」と言われれば、素直に清掃をする。500円の人もいれば、1000円の人もいた。中には、ゲームしながら挨拶しないガキンチョもいた、作られた安全な公園、用意されたベンチ、小さな植物、家で飼われてる小さな犬。ドラマみたいな、自分の生活とはまるで違う世界に驚きながらも、これが世の中なんだろうと思ったりして、清掃員に扮してこの世界にまぎれこんだ気持ちになった。

2012年04月27日 BLOG