蛇谷 りえ / JATANI RIE

Untitled

わたしは、一人の人と話していたり、複数人の人と会話をしていると、言葉以外の、ざわめきみたいなのが感じるときがあるの。人や状況によっても変わるけど。たまに、針金みたいな細い硬いものに黒くて細く長いミシン糸がぐるぐるに絡まったようなものが言葉にまとわりついたり、ひどいときは金物をひっかいたような耳障りの悪い音や、暴力的で他のものをさえぎるような強い音を感じるときがある。相手のその言葉に対して、わたしの心はざわざわして、気分がよくなくなるの。そういうとき、そのまとわりついているものをなるべく見ないように、聞こえないようにして、目を細めて話を聞くの。今までもそうやってきた。この前も、あ、またこれだ。って思って、初めは戸惑ったんだけど、でも、わたしが深呼吸をして、ゆっくり言葉を声に出すと、それはやがて消えてなくなったの。相手の言葉の速さにまどわされないように、まっすぐ、ゆっくり、小さく、少ない言葉数で話すと、効果的だってことがわかったの。さっきまで絡まっていた黒いものたちが、風ひとつ吹いてない、きれいに整った波のように鎮まったことがわかった。それは一体なんなのか? 考えたところでわからないけど。でも、次、またその時がきても大丈夫な気がするわ。朝、風のとおるキッチンでパンケーキをテキパキ食べながら彼女は言った。

2016年05月13日 BLOG