蛇谷 りえ / JATANI RIE

悲しみと優しさ

ここ何ヶ月か、友人から勧められる本がよしもとばななの本でおもしろい。たしか昔にも「これはじゃたにさんが持ってる方がいい」と預かった本もそうだっ た。読んでみると、海に関する本で、なんだか気になって、なんども読んだ。もらった最近の本も海の話が多い。あと、別れの話がちょこちょこ出てくるけど、 よしもとばななの言葉は、身体的に別れを描くからぞくっとする。身体のオカルトさというか、言葉では絶対だれにも共有できない体の感覚の悲しみ、みたいな ものが描かれていて、うわーってなる。うわー、それも知ってるんだ。ってなる。この感覚が描けるってことは、この人もきっといろんな別れを経験してきたの だろうと、悲しみさえも感じる。そういえば、音楽のライブに最近いって、コントラバス奏者が気になって、調べていたらバンドをたまにやっていて、そのバンドが鳥取にくるという奇跡が起きた。生演奏を聴いたら、やっぱりそれはよくて、そこには、どうしようもない悲しみみたいなものが音になって出てきた。悲観的になることに肯定的です。悲しくなるときもあるよね。と、真夏の晴天の空の下で、とある一家の自宅で開かれた演奏会で彼はつぶやき、曲を進めた。わたしの横 に、コントラバスやクラリネット、アコーディオンの奏者をぼんやりみている幼い子どもがいて、わたしの素足にぴたっと、靴下をはいたこどもの足の裏がわたしの足の裏にくっついた。ほのかにあったかくて、優しかった。

2016年08月18日 BLOG