蛇谷 りえ / JATANI RIE

他人を入れる

頭で考えこむより、ぽいっと、相手に投げてみると、また違ってみえてきて、それっと投げ返す。速攻が好きなもんで、すぐに打ち返しがちだけど、ラリーがずっと続くこともおもしろがれるように、前よりはなったと思う。あるとき、三つ目のなにかが開いたときの、閃き(閃きというか、ぽろっと蓋が開いたような)なんかは、いやいや私、小指の力しか、まだいれてませんよ状態で。力っていうか、もはや、振る舞い。舞みたいなもんだ。音楽みたいな、踊りみたいな、空気みたいな、深呼吸みたいな。ふっとしたものが通過したとき、複雑でぐちゃぐちゃの世界にスコーンと一筋の光が走る。それで、わたしはすっきりする。自分のことを限りなく透明にして、なれない他人になると、風景がちがってみえて、たのしくなる。そういうことができるときと、できないときがまだまだあって、そこは修行。

自分の輪郭を知ると昔から嬉しかった。どうしようもない私の輪郭。輪郭じゃなくて、型としてとらえて、私の型を意識する。今読んでる佐野洋子の「シズコさん」がいい。佐野洋子自身のどうしようもなさがリアルすぎて、一周まわって詩に乗せてそれでいい。って。波打つ心を落ち着かせてくれる。静かな黒い夜の海みたい。心の動きをあんなリズムで描けるのすごい。

2017年10月26日 BLOG