蛇谷 りえ / JATANI RIE

五穀塩断ち2018・冬

1日、2日目は余裕だった。とにかく咀嚼が大事と、鍼灸師からも、料理人からも言い続けられる。咀嚼がなぜ、胃が弱いわたしにとって、みんなにとって、大事なのか、咀嚼するように何度も質問する。出てくる料理は、五穀塩断ちとわざわざ言わなくてもいいぐらいの美味しい料理で、うっとりしながらたらふく食べる。野菜の旨味と食感と香り。この三点が超重要でこのバランスを整えるのが難しいのだけど、井口さんは、膨大な知識とテクニックで、ちゃちゃっと作るので、見過ごさないように質問する。美味しいのは食べる前からわかってる。だけど、なぜ美味しいのか、いつも問答する井口さんの魔法の料理。デザートのストーブの上でつくる土鍋の焼きりんごと焼きバナナは贅沢すぎた。今日も食べたい。焼いてるだけなのに。

3日目から異変があった。人と話してて、急に悲しくなって、辛くなって、どうしようもなくて、「ああ、誰かに猛烈に優しくされたい」って願うほどになった。でも、なんで、漠然とこんな気持ちになったのかなー?と、書き出して考えたら、人の事なのに、自分のことのように悲しくなってる自分がいて、「落ち着け、私が悲しいわけじゃない。」とチョコレイトもコーラも飲まずに、だれかに助けの連絡もせずにひとまず、ナッツを食べて乗り越える。空腹だと不安になりやすい私。そして、その夜、方々で離婚話が相次ぎ、なんで人って別れるのに一緒になろうとするんだろう。ともやもやした気持ちが湧いてきた。別れるのは悲しいから、そもそも一緒にならなかったらいいんじゃないか。とか。眠い目で夜中まで話した。朝、布団の中でまだなんか気持ちがすっきりしなくて、もぞもぞ布団の中で考えたことを井口さんに話す。なんで、悲しいってわたしは思うんだろう? いろいろ考えていたら、昔の悲しいことをごっそり思い出した。で、それを井口さんに話たら、涙が少し出た。もっと流していいんだよ、五穀塩断ちの効果だから。と。ああ、わたし、ずっと前の悲しいことを消化できずにいたんだ。もぐもぐもぐもぐ咀嚼した。周りのペースで飲むこんじゃだめ。咀嚼が大事。侮れない、五穀塩断ち。

2018年02月01日 BLOG