垂木の額縁
とっとりのギャラリーで、2年前にみた絵。油絵で、明るいカラフルな絵の具で、のびのびと大きい画面で描かれた絵に、わたしがいつか一人でみた海みたいな絵があって、海みたいやな、と思っていたら、海をみて書いたときいて、同じ海は海ではあるけれど、わたしがみたあの感じの海が描かれていることにびっくりして、なにか惹かれるものを感じた。この絵は販売してるんですか?と聞くと、お金というよりは、僕の人生みたいなものを分ける感じかなー。と言われたので、値段がつけられないことに身構えた。でも、いつかこの人のアトリエにいってみたいと思って、住所と電話番号がかいた名刺をもらったが、いつ行けば相手に迷惑しないかとか、手土産はなにがいいかな、とか、手に入れたものの、壁が小さかったら絵に悪いな、とか、いろいろ気を使って考えていたら、今月DMが届いて、あれから2年がすぎたことに気がついた。そのおじいさんは神戸に自宅があって、鳥取で毎年展示をしているというけど、わたしは去年の展示は知らなくてみれてなくて、2年ぶりに見ることができた。展示を行く前に、ギャラリーのオーナーとおじいさんの絵の話になって、彼が大病を抱えていることを知る。仕事の合間をぬって、彼が在廊していることを確認して、そろりとギャラリーにはいると、自分の家みたいに優雅に迎えいれてくれて、あわてて名前を名乗る。彼の作品は、また少し変化があって、作品の話をゆっくりしてもらうが、わたしはあの海の絵が気になっていて、遠回しに、過去の絵はどうして管理するんですか?と聞くと、2年前の絵はフランスの友人が引き取ってくれた、残りはキャンバスをはがして丸めてる。といい、ああ、あの海の絵はもう見れないのか。と内心残念に思いながら、相づちをうった。絵も人間も時間がたてば変わるからね。いいかげんなものだよ。と笑いながら彼は話を前に進める。彼の絵の話をきいてると、図々しいからね、これでいいなって思えるようになるんだよ。とか、油絵は乾燥したときと、してないときで色がちがう、今はこれ微妙だなっておもっても、時間がたつといいなって思えるようになったり、だから、他の絵を並行して描いて、乾かしてる間に、他の絵のことを考えたりして、自分の気持ちがかわっていくのが面白いよね。とか、特にわたしの悩みの相談とかしてないのに自分の話を聞いてるような不思議な感覚になる。話を続けていたら、あの海の絵の話になって、あの海の絵はまだアトリエにあるということがわかった。あの絵は他の絵と比べて絵の具の量がとてもすくないけど、手数が多いんだ。シュシュシュシュシューっとね。そんなに欲しいなら送ってあげるよ、と言ってくれたけど、いや、どうしてもアトリエもこの目でみたいから、置いといてほしいとお願いをした。2年前の気持ちといまの気持ちもちがうだろうし、現物をみてから考えたらいいよ。とやさしく約束をした。
2018年05月27日 BLOG