蛇谷 りえ / JATANI RIE

ニュートラル

最近、いい本を読んだ。いい本は一気読みできる。いい本は読んでる間、知らない世界に連れていってくれて、本を閉じたあと、読む前とは違う世界に自分がいる。なんというか身体ごとどこかに運ばれたような。身体の感覚が残ってる。

友達もだいたい仕事が減ってるので、最近どうしてるか、と話をする。せっかく時間があるんだから、もっともっと自分のことを見つめてもいいんだよって言われて、休みをつくって、なるべく自分のことを考えるようにしてる。考えるといっても、椅子に座って、とかじゃなくて、犬の散歩しながら、車の運転しながら、寝転びながら、なんかぼーっとしながら、具体的なテーマはないけど、なんか好きなこととか思い出したり、気になってたことをとことん考えてみたりしてる。そのモードに出たり入ったりして、ちょっと切り替えが疲れるけど、それが最近おもしろい。

あと、休みの日に、友達に手紙をかいたり、かばんをつくってあげたり、カーテンを直したりした。料理はもう、毎日実験で、実験すぎて普通になってる。目につくのは、カーテンの色とか、ズボンの履き心地とか、棚がずれてることとか、細かいことで。気になるので直す。カーテンは、この間きれいな黄色の布にしたんだけど、最近部屋の光が気になるから、やっぱり白に戻そう。なんか人工的な色や柄が大きい面積をしめるのが、目につく。でも白もなんか違う。草木染めをして大事にとってた布をカーテンにした箇所があって、それがいい感じなので、今度は大きいカーテンにしてみよう。でも、大きい面積の布はまっすぐ縫うのが大変だから、パッチワークにしてみよう。どうせならいろいろ染めて貯めてからにしよう。たんぽぽの黄緑以来、赤い色ばかりが続くけど、生地によって染まり方が違うから悪くない。次は何を染められるかな。家であれこれ実験していて、生活をつくってる、というよりは、いい感じになったらだれかにあげる運動になってる。手紙もその延長にある。犬の写真も犬好きに向けて撮影してたらなんか楽しくなってきてる。

あの子にはあれをつくってあげよう、と思いつく感じ。昔もよくやってた。課題とか仕事の合間に、夜な夜な思いついてはある材料でつくって、誕生日とか、なんかしら口実を見つけては、本人が望んでもいないものを突然つくってあげてた。とにかく作って、売ろう、とか、誰かに見てもらおう、とか思わなくて、身近な人を思い浮かべて色やものを選んで作って、驚かすのが好きやった。今も、あのときみたいな欲求がある。驚かしてやろうって意気込みはなくなったけど、なにか自分なりのこんなもんかな具合で完成させてる。道着のパンツもいい感じにできたけど、生地は気持ちいいけど、薄かったのか形が微妙だったのでパジャマになってる。

仕事であんなに人と一緒にいたので、誰かとつくることばっかり考えてたけど、それがどうやってもできないので、諦めて、一人の感覚を取り戻すことにした。こんなに一人でいると、snsをみない限り、他人のことを気にすることがない。家を出たら池しかないし、目を覚ましたら犬が毎朝スリッパ加えてウロウロしてる。至って平和な毎日で心が穏やかになる。そのせいなのか、なんだかわからないけど、ふとしたときに、何かを作ろうとしてる自分がいる。誰かと作れないから、一人で作れるものは何があるか考えてる。

2020年04月25日 BLOG