待て
おとうさんに待てを教えている。待てをしている間のおとうさんの顔は、真面目でおもしろい顔をしてる。わたしもあんな顔をしてるんだろうか。真面目な人の顔をおもしろい。本気な人の顔はかっこいい。散歩をしてると、ときおりわたしの目を伺うようになった。そんな風に歩かれるとちょっと気をつかうけど、大事な関係らしいから、わたしもいばったフリして歩くようにしている。
おとうさんを離して散歩してたら、畑の中や芝生のグランドに気持ち良さそうにはいっていく。しかし、人がそこにいて申し訳なさそうな顔をして私はおとうさんを追っかけるが、おとうさんはまるでわかってるかのように、ひょうひょうと逃げていく。たまにわたしが近づいてくるのを待って、走っていく。追っかけっこがはじまってしまったが、近くにいた人は「なにをかんがえてる!」と久しぶりに大きな声で怒られる。「公共の場所やぞ、常識をしらんのか!」とどなられる。ひさしぶりに怒られると、ことばが冷静にはいってくるので、ひさしぶりに怒られてるなあ。とびくびくしながら「はい」とだけうなずいて、怒りが落ち着くのを待つ。とりあえず、たくさんあやまって、おとうさんを引き続き追っかけ、捕まえた拍子に「コラ!」と大きな声を出す。目を合わせる。そしたら、なんだか申し訳なさそうな顔をしておとなしくなる。わかってるみたい。すごいなーと感心しつつも、怒ってるおじさんがまだ近くにいるので、申し訳そうな顔をしながら、おとうさんと二人で後にする。噂にならないように、とうぶんあの場所にはいかないでおく。たいへんやなー、犬も。
2014年11月28日 BLOG