蕩尽(とうじん)
徹底的な消費のこと。バタイユ(Georges Bataille 1897~1962)によって、単に経済的な消費活動としてだけではなく、人間の生の全体性を回復する活動として位置づけられた。バタイユは、消費(consommation 仏)を「生産的消費」と「非生産的消費」に分類する。生産的消費とは、マルクス(Karl Heinrich Marx 1818~83)の「生産的消費」および「消費的生産」に当たり、一時的な損失ではあるが結果として生産に役立つような消費(たとえば、労働力の支出、生産手段の損耗、原料・燃料の消費など)のことである。これに対して非生産的消費とは、決して生産に還元されることのない無駄な消費(たとえば、供犠、浪費、芸術など)を指す。人間は、生産あるいは生産的消費に従事しているかぎり有用性に隷属する存在であり、非生産的消費すなわち蕩尽することによって、有用性に従属しない至高性(souverainet 仏)を回復するのである。また、バタイユは、モース(Marcel Mauss 1872~1950)による贈与論の影響の下、商品の経済的な交換と所有物の純粋な放棄である贈与を区別して、後者を生産的なエコノミーに対するアンチテーゼ、すなわち蕩尽であるとした。
2022年02月08日 BLOG