蛇谷 りえ / JATANI RIE

じゃがいも

昼間に寒すぎて入った温泉の窓にはいる日差しがすごくきれいで、メガネを外して綺麗だから、視力がよければもっと綺麗だったと思う。白いタイルが蒸気でキラキラして、窓にはいる日差しがキリッとした立体感をつくっていた。小さい窓には、青空がのぞいていて、こんなに青い空を鳥取でもみれるんやなーと、湯気の中で一人でしゃべった。天井が高いお風呂なので、のぼせることもなく、冷えた体がじわじわと温泉と同じ温度になって、気持ちよすぎてこのまま温泉になり たかった。お風呂からあがって、しずかに着替えていたら、「ドアが開いてるよ」と声をかけられ、人間にもどる。明るいうちにかえりたかったが、日が落ちていくのをなんとなくみる。マクドナルドのフライドポテトが食べたくなったけど、家にたしかじゃがいもがあったことを思い出して、ぐっと我慢する。じゃがいもで摂取する炭水化物が好物かもしれない。じゃがいもの味を思い出して、車に流れてくる聖子ちゃんの歌詞を耳にやきつけながら、海のようすをのぞく。気がついたらフロントガラスが暗くなっていて、アクセルを強めにふむ。そのあとのことは何を考えていたのかあまり覚えていない。やっとのことで到着して、すぐさまじゃがいもを洗って、薄めにきって、薄力粉をまぶして、油を熱して、揚げる。火がとおることをイメージしながら、お湯をわかして、お客さんがおいていったウィスキーにそそいで、ぐびぐび飲む。昨日つくったものの食べられなかった豆のカレーを横であたためて食べる。じゃがいもの味がカレーの味に負けて、よくわからなくなる。寒いキッチンでもぐもぐ一人で立って食べているもんだから、三軒となりの友達の家へおぼんでこれらを運んで食べようかなと、ふとよぎったが、気持ちを抑えて、二階の部屋へ暖をとろうとしたら、もうすでに部屋に一人いて「寒いね」と言い合う。寒すぎてストーブの前から離れられない。長い冬がまだ少し続きそうで、毎年この時期はなかなか気分があがらないから、読みたい本を買ったり、あったかい服を考えたり、遠くに想いを馳せてみたり、気持ちをあっちこっちさせてみたりするけど、ぎゅっと集中するようなことをしないと、いつまでも寒いし、時間がなかなか進まないな。

2016年02月03日 BLOG